「トモダチ作戦」に参加した米海軍の水兵らが、米国で東電を訴えている裁判の続報です。予定通り 2月6日に、サンディエゴの連邦裁判所に再提訴が行われた模様です。(初回の提訴は、裁判管轄権を理由に昨年11月に却下されていました。)
この裁判の行方は、日本の国民にも大きな影響を及ぼすと考えられます。例えば、国内の被災者が東電を訴えている裁判の議論にも影響があるでしょう。また、東電が敗訴した場合に支払う損害賠償金は、東電が破綻状態にあることから、結局は公的資金 (税金) の投入という形で、私達国民がツケを払わされることになるでしょう。 さらには、日米同盟の行方にも波及する話ではないでしょうか。
にもかかわらず、国内のマスコミがこの裁判をほぼ黙殺しているのは、今まで隠していた諸事実が裁判を通じて明るみに出ることや、国内の裁判に影響することを、原子力ムラ・マスコミ・日本政府が恐れているからではないでしょうか。
◆ 2014年2月8日付 米NBC、同 7日付 英テレグラフ
- 原告は79人 (訳注1) で、米水兵らおよびその扶養家族から成る。「トモダチ作戦」当時、母親である水兵の胎内で被ばくし、その後に生まれた乳児も含まれている。昨年の初回提訴時には、原告は 12人ほどだった。被告は東京電力。
- 原告らは、トモダチ作戦の遂行中に放射能に被曝したため、ガン・白血病・眼病・生殖器官の病などにかかった、と主張している。被災者救助のために放射能に汚染された水の中を歩いて渡ったり、汚染水を飲用・入浴用に使ったりした、という。
- 原告団は、東京電力を過失・厳格責任・事実の隠蔽などの罪で訴え、医療費および損害賠償金として 10億ドル (約 1千億円) の支払いを求めている。
- 「東電は、米国の初動対応者たちが有害な放射線にさらされると認識していながら、それを連絡しなかった。東電には、福島原発の近くにいた、または近くに向かいつつあった全ての人に、すでに発生・進行中だったメルトダウンによる放射能の危険について、知らせる義務があった。東電はこの義務を怠り、過失により原告らに傷害・損害を負わせた。」
- 米国政府は、水兵らが被曝した放射線は、危険な水準ではなかったと主張している。(訳注2)
- 裁判のタイミングは、折しも海を渡って来た放射能が北米西海岸に到達するとされる時期と重なった。カナダ国民がヨウ素剤を買いだめし、地方自治体が海産物の検査強化を決議し、カリフォルニア沿岸でケルプ (昆布) の放射能汚染の研究が開始されるなど、放射能の影響への懸念が広がっている。
(訳注1) ただし、2014年1月27日付の原告側弁護士のインタビューによれば、 トモダチ作戦の参加者全員 (約 7万人) について、将来発症しても損害賠償が受けられるようになっている模様。(いわゆる集団訴訟、class action) 下記訴状の 14ページ目、第84項がそれに該当すると推定されます。
(訳注2) 米国政府の主張は、外部被曝のみを考慮したものであり、内部被曝の危険性を考慮していないように見受けられます。米国政府としても、放射能の影響だと認めてしまうと、米国政府・海軍の管理監督責任を問われるとともに、米国の放射能安全基準や原子力政策にも波及するため、放射能の影響ではないと言い張るしかないのでしょう。
(訴状のpdfファイルが下記にて閲覧可能です。) http://msnbcmedia.msn.com/i/MSNBC/Sections/NEWS/A_U.S.%20news/US-news-PDFs/140207-fukushima-suit-maj.pdf