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【フクシマ・タイムズ】 2013年12月18日 On Fukushima Beach (2)


◆ On Fukushima Beach (福島の渚にて) - その2

ドキュメンタリー映画 “On Fukushima Beach (福島の渚にて)” の抄訳の続きです。
(前回分はこちらにてご覧いただけます。)

(動画はこちらから)
http://www.youtube.com/watch?v=dOSjkEwCc8o

(11:15 – 15:15) 殺人兵器:放射能

放射能は、人間の五感では感知できないので、本能による防御が利かない。人工・天然の境界を蔑むように乗り越えて、静かに浸透していく。大量に浴びれば、人を数時間で殺傷し不具にする力がある。微量であっても、種々の致死的な病を引き起こす。宿主を殺傷しなかったとしても、その子孫を殺傷し不具にする力がある。

Helen Caldicott博士:

「正常な胎児が、脳内に入り込んだ微量のプルトニウムに被曝すると、奇形が発生する。プルトニウムは特に変異原性が高く、睾丸に対する指向性が高い。睾丸に入り込むと精子内の遺伝子に突然変異を引き起こし、子孫に遺伝的疾患を引き起こす可能性がある。劣性突然変異の場合、発現するまでに20世代かかることもある。

プルトニウムを取り込んだ体を火葬すれば、大気中に再放出される。プルトニウム [239] の半減期は、24,000年以上だ。

プルトニウムは、肝臓に貯蔵されて肝臓ガンを、骨髄に貯蔵されて白血病や骨肉腫を引き起こす。胎盤を通じて胎児に取り込まれる。」

(15:15 – 21:40) メルトダウンの隠蔽

  • 原発爆発直後に、日本政府は30kmの立入禁止区域を除き、放射能汚染の危険はないと宣言した。
  • WHO は、予防的にヨウ素剤を摂取した人々のことを、茶化して報じた。
  • CNN・BBC・ロイターなど主要報道機関は、異常なし、と調子を合わせた。被曝量はせいぜいCATスキャン程度、いう話を引用して人々を安心させた。
  • 日本の報道機関は、放射能について全く報道しないことを選んだ。
  • 放射能は決して北米まで到達しない、という無数の論評が出た。
  • 安全の幻想を強化し、人々の懸念を抑えるため、放射能に肯定的な論評が出された。

カク・ミチオ博士は、主流メディアで福島事故の実情を発言することを許された、数少ない声の一つだった。

2011年12月、日本政府と東電は、原子炉3基の冷温停止を達成したと宣言。これは中身のない一里塚であった。彼らの工程表の記載通りに発表しただけで、何かを物理的に達成した訳ではなかった。

だが、福島第一原発に関する否定的な報道を停止することには成功した。日本政府は報道を抑圧し、メディアはそれに同調した。

現実には、3.11後の東電・日本政府内の舞台裏で起きていたのは、パニック・隠蔽・虚偽情報の混乱劇であった。

1~4号機の爆発を受け、東電は市民に警告を発しなかった。東電本社の上役らは、吉田昌郎所長に福島第一から撤退するよう促したが、吉田所長はこれを拒んだ。吉田所長は、菅政権の当局者らに電話で、福島第一から撤退すべきでないと訴えた。清水正孝社長は、これと相反する電話を首相官邸にかけ、東電職員全員を退避させる許可を求めた。吉田所長は、これに猛反対し、原子炉に海水を注水するなという東電の命令をも無視した。これによって、全6基がメルトダウンする事態が回避された。

東京では、政府の科学アドバイザーらが、東電の提供する不完全な情報を元に、菅首相に状況を説明した。菅首相は、人口3千万人の東京に退避命令を出すことを真剣に検討した。

緊急会議に同席した松本健一内閣官房参与によれば、数千万人を避難させるという議論は、原発危機そのものよりも酷い集団的パニックと大混乱を引き起こす恐れがあるとして、最終的に却下された。菅直人は、当時日本が国家として機能し続けられるのか内心疑問に思った、と後に告白した。

これらが示唆するのは、東京から人を退避させないという決定に当たっては、国民の健康に対する考慮よりも、パニックを回避し、うわべだけの正常と平穏を保つ必要性が優先された、ということだ。増大する放射能の危険をよそに、日本国家・首都の一体性は、いかなる犠牲を払ってでも維持される必要があった。

(抄訳の続き – その3 – はこちらにてご覧いただけます。)