12月3日に行われたバイデン米副大統領と安倍首相の会談を報じた、日本の大手新聞各社の12月4日付朝刊と、同日付の英フィナンシャル・タイムズ (FT) 紙の見出しを比較してみました。
- 朝日新聞: 中国防空圏 日米で連携 安倍首相、バイデン米副大統領と会談
- 毎日新聞: 中国識別圏 「黙認せず」 米副大統領 安倍首相と一致
- 読売新聞: 中国防空圏 「黙認せず」 安倍首相・米副大統領会談
- 産経新聞: 中国防空圏 「黙認せず」 首相と米副大統領 連携一致
- 日本経済新聞: 中国防空圏 「黙認せず」 首相と米副大統領 連携を確認
- FT紙: バイデン氏、中国防空圏を破棄せよとの要求につき、日本を支持せず
(Biden fails to back Japan on call to scrap China air zone)
(訳注) fail to~: ~しない、~しそこなう、~できない
皆さんは、これを見て、どのように感じられただろうか。
それにしても、日本の大手新聞は、まるで各社示し合わしたかのような横並びぶりである。日本の各紙の見出しからは、会談が上首尾で終わったような印象を受けるが、逆にFT紙の見出しからは、会談が上手くいかなかったような印象を覚える。
このように、同じ出来事であっても、どこに焦点を当てて伝えるかによって、受ける印象はずいぶん違うものだ。
私は、日本のマスコミの報道がすべて間違っているとか、海外のメディアの報道がすべて正しいとか、言うつもりはない。FT紙の報道も、ずいぶん偏向しているな、と読んでいて感じることがある。そもそも、完全に公正中立な報道は、おそらくこの世に存在しない。
ただ、上の例から一つ言えるとすれば、情報源を日本の大手マスコミだけに頼ると、一面的な物事の見方に陥る危険性が高い、ということではないだろうか。
それは、片目だけで物を見るときに、遠近感や距離感が測りづらいのに似ている。
海外のメディアを参照する意義は、そこにあると思う。日本のマスコミとは異なる視点に気付かせてくれ、複眼的な物の見方をする一助になる。
すべての報道には何らかのバイアスがかかっていることを承知した上で、事象の本質を見抜く眼力を養いたいものである。