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【FT解説】 イタリア ユーロ加盟に向け粉飾の疑い


日本ではあまり報道されていないようだが、6月26日付のフィナンシャル・タイムズ紙は、イタリアがユーロ加盟条件を満たすために、1990年代にデリバティブを利用して債務残高などを粉飾した可能性があると報じた。(デリバティブ契約の相手方は、どうやらJPモルガンらしい。)

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そして、マリオ・ドラギ欧州中銀 (ECB) 総裁が、当時イタリアの財務省財務局長だったことから、粉飾へのドラギ氏の関与の有無が問題になる可能性が浮上している。

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実は、ギリシャもユーロ加盟条件を満たすために、 債務残高を粉飾していたことが、2009年の政権交代時に明らかになっている。当時のパパンドレウ政権が暴露し、ギリシャ財政危機の引き金となった。

ギリシャの粉飾決算に手を貸した (デリバティブ契約を締結した) のはゴールドマン・サックスだった。 そして当時、ドラギ氏はゴールドマン・サックスの副会長を務めていた。(ドラギ氏はイタリアがユーロ加盟を果たした後、 2002年にゴールドマン・サックス・インターナショナルに入社。)

つまり、ドラギ氏は、イタリア・ギリシャ両国のユーロ加盟に絡む粉飾決算を関知していた可能性があるのだ。 そして同氏が、今度は欧州中銀 (ECB) 総裁として、 両国の債務危機の「火消し」として登場して来ている訳である。 これは果たして偶然の一致なのだろうか?

(ゴールドマン・サックスといえば、 イタリア前首相のマリオ・モンティ氏も、首相になる前にゴールドマンの国際アドバイザーを務めていた。

またゴールドマンは、アメリカ政府とも関係が深く、 ガヴァメント(=政府)・サックスと揶揄される位である。 例えば、2008年のリーマン・ショック当時のヘンリー・ポールソン財務長官もゴールドマン出身者だ。

私がゴールドマン人脈に こだわるのは、こうした事情を踏まえてのことである。)

折しも、イタリア国債の金利は上昇傾向にある。 イタリアの債務粉飾問題が、金融危機再燃の引き金となる可能性もあり、 要注視である。