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【うらおもて歴史街道 No.1】 ユダヤ人と経済生活


○第三部「ユダヤ的本質の誕生」

第三部では、いかにしてユダヤ人固有の性質が発生したかを説く、いわばユダヤ人種論が述べられる。

ユダヤ人は、本質的には遊牧民 (砂漠の民、放浪の民) であった。(ゾンバルトは、対比として、ヨーロッパの北方民族 (ゲルマン人) を森の民 (定住民) であったと述べている。)

紀元前1200年頃、略奪と殺人を繰り返しながらカナンの地に侵入・定着したユダヤ人は、大部分が利子生活者や地主として都市内に居住した。一方で、従属させられた原住民は、小作農民あるいは「自由」農民として土地の耕作に従事した。

「あなたの神、主は、あなたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに向かって、あなたに与えると誓われた地に、あなたをはいらせられるとき、あなたが建てたものではない大きな美しい町々を得させ、あなたが満たしたものではないもろもろの良い物を満たした家を得させ、あなたが掘ったものではない掘り井戸を得させ、あなたが植えたものではないぶどう畑とオリーブ畑とを得させられるであろう。あなたは食べて飽きるであろう。」 (申命記 6章10, 11節)

その後、バビロン捕囚などでカナンの地を離れて世界各地に離散したユダヤ人は、どこかの土地に入植して農耕に励むのではなく、異民族の中に分散し、好んで大都市に居住することを選択した。 ゾンバルトは、大都市は砂漠の延長であり、砂漠と同様、居住者に遊牧民的生活を強いる、と言っている。けだし名言である。

「都市は人間を豊かな土壌から駆逐し、動植物 (…) との共存から隔離する (…) 。こうした人間の内部では、有機的自然の理解をはぐくむ唯一の源泉である、おのれと生命あるものとの共存が歪曲され死滅する。」 (本書p.535-536)

資本主義経済が極限まで行き着いた現代に、ひときわ心に迫る言葉だ。

そして、宗教 (律法の厳守) と近親結婚を通じてユダヤ人の根本特性 (合理主義など) は一層強化されていった

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