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【フクシマ・タイムズ】 2014月1月27日 シマツ・ヨウイチ仮説抄訳


 

テキサスの盗み

米国の核弾頭工場である BWXT パンテックスは、エネルギー省 (DoE) とバブコック・アンド・ウィルコックス (Babcock & Wilcox, 訳注4) によって運営されている。その敷地は、テキサス州最北部のパンハンドル地域にあるアマリロ市郊外に 16,000 エーカーにわたって広がっており、耐用年数を過ぎた核弾頭の貯蔵施設としても機能している。コロラド州ロッキー・フラッツ [核兵器工場] が地元の圧力を受け 1989 年に閉鎖された結果、そこの核弾頭の在庫がパンテックスへの移転を強いられた。核を盗もうと企てる者にとっての標的となることから、パンテックス工場への入場には許可証が必要である。

2004年6月、国家核安全保障局(National Nuclear Security Administration、略称NNSA)アルバカーキ事務所において、システムのサーバがハッキングを受けた。パンテックスの連邦政府職員11名と請負業者職員177名の個人情報および入場許可証データが盗まれた。NNSA は、この不正侵入から3ヶ月後まで、サミュエル・ボドマン(Samuel Bodman)エネルギー省長官やクレイ・セル (Clay Sell) 同省副長官に通知しなかった。このことは、捜査員らが内部犯行ではないかと疑っていたことを示している。

ブッシュと安倍がキャンプデービッドで会談していた頃 [2007年4月]、パンテックス警備員の組合員500人が45日間のストを敢行した。(訳注5) [労組が認めるより低い賃金・条件で働く] 非組合員が雇用されたが、エネルギー省(DoE)監察総督室によれば、その多くは入社試験に不合格であったという。監察総督室の報告書は、「試験に落ちた代替の警備員の一部に、BWXT 職員が合格点を与えた」、「試験に落ちた者に、請負業者の職員が正解を教えた」 といった目撃者の証言を引き合いに出した。

この2ヶ月に及ぶスト中の好機に、核弾頭のコアを積んだトラックがゲートを出てゆっくりと走り去った。[キャスク]に充填した核弾頭のコア約16トンが、核分裂を防ぐため冷蔵コンテナに入れて搬出された。ヒューストン港にて、この危険な積荷はイスラエルの国有船会社が運営する船舶に積み込まれた。 港湾検査官の Roland Carnaby がこの放射性物質を検知した。Carnaby は、大量破壊兵器を阻止する連邦政府プログラムの下で、民間契約者として働いていた。

2008年4月29日、ヒューストンの警察官らが高速道路上で Carnaby を追跡し射殺した。諜報コミュニティでは、今もこの銃殺に関する噂話が飛び交っている。後に Carnaby の港湾監視の契約は、イスラエルを拠点とするセキュリティー会社 NICE (ネプチューン・インテリジェンス・コンピュータ・エンジニアリング) に与えられた。同社は、イスラエル国防軍の元将校らが所有している。

データの盗難から密輸作戦まで、このパンテックスでの盗み全体を通じて、核問題におけるブッシュとチェイニーの右腕になったのがエネルギー省副長官のクレイ・セルであった。セルはアマリロ生まれの弁護士であり、パンハンドル地区の下院議員 Mac Thornberry の元助手であった。セルは、ブッシュ-チェイニーの政権移行作業チームの一員として働き、核問題担当の大統領補佐官となった。セルは、エネルギー省において、17の国立研究所とパンテックス工場を含む核兵器 [産業] 複合体の責任者であった。(警鐘をもう一つ: セルは、アラスカの故 Ted Stevens 上院議員の下で上院エネルギー小委員会の事務局長を務めたが、同議員は 2010年に飛行機墜落事故で亡くなった。)

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(訳注4) アメリカの総合エンジニアリング企業で総合重機械企業。なお、原文では Wilcox ではなく、Wilson (ウィルソン) となっているが、これは誤記と考えられる。

(訳注5) このストの発生については、新聞記事等で確認できる。

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