○終わりに
ゾンバルト自身が断っているが、本書は近代資本主義の発展にユダヤ人が果たした役割を明らかにするために、それ以外の要素はあえて焦点から外している。当然ながら、近代資本主義発展のすべてがユダヤ人に起因する訳ではない。例えば、アメリカ大陸とその銀鉱山の「発見」がなければ、また諸々の技術革新がなければ、近代資本主義はありえなかったであろう。
ゾンバルトは、本書以外にも、主著の「近代資本主義」(1902年初版) をはじめ、「恋愛と贅沢と資本主義」(1913年)、「ブルジョア – 近代経済人の精神史」(1913年)、「戦争と資本主義」(1913年) などを著しており、資本主義の発展を興味深い視点から捉えている。
金森誠也氏の解説によれば、(本書が出版された1994年頃の状況として) ゾンバルトの理論を再認識しようとする動きが欧米各国でみられる、とのこと。「本書を重要とみる経済関係者は多い。それというのも、最近、ユダヤ金融資本の力の大きさが改めて痛感されるようになったからであろう。」 (本書p.635)
本文 約550ページ、ドイツ語の直訳調の固い文章のため、読むのに骨が折れるが、本書のテーマに興味のある方は一読の価値あり。(終わり)
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