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【フクシマ・タイムズ】 2014年1月30日 日印原子力協定の裏事情


インドでも日本同様、草の根の原発反対運動が湧き起こっています。核軍縮平和連合 (CNDP) は、先日の安倍首相のインド訪問に合わせ、日印原子力協定の締結に反対するキャンペーンをインド各都市で実施しました。その記事を見ていくと、安倍首相の訪印の主要目的だった日印原子力協定の裏事情が見えてきました。

◆ 2014年1月21日付 核軍縮平和連合 (CNDP)

『安倍さん、まず福島を収束させてください! インドはあなたを歓迎します。でも原子力はお断り!』

http://cndpindia.org/2014/01/mr-abe-fix-fukushima-first-youre-welcome-to-india-nukes-are-not-urgent-campaign-update/

以下、翻訳サイトから抜粋します。
(http://shar.es/UQlly 「あらゆる方面から沸き起こる『日印原子力協定にノー』の声」)

「インド南部タミルナドゥ州のクダンクラム原発周辺では住民による大規模で平和的な原発反対運動が続いています。その拠点であるイディンタカライ村では (中略) 反対運動を理由に、村全体が治安部隊の包囲下にあり、多くの住人が「インド国家に戦争をしかけた罪」や扇動罪などの重罪の嫌疑をかけられています。」

「日本はおそらくインドに原子炉を直接輸出することはないでしょう。しかし日印原子力協定は、フランスや米国の原子炉による発電所計画の実現のために、なくてはならないものなのです。米国のウェスティンハウスやGEの大株主は日本企業であり (注)、また仏アレバ社の原子炉の非常に重要な部分は日本企業が生産しているものだという事情があります。

(注) ウェスティンハウスには東芝、GEには日立がそれぞれ出資している。ウェスティンハウスとGEは、それぞれインドで原発プロジェクトを推進している。日本がインドと原子力協定を結ばなければ、これらのプロジェクトの推進に支障が出るのだ。 (下記 Kumar Sundaram 氏のインタビュー参照。)

「これらの国々は、原子炉の輸出元であるメーカーにも事故時の賠償責任を負わせるインドの原子力損害賠償法の適用を拒否しています。また、日本政府に対しては日印原子力協定の早期締結に向けて圧力をかけています。」

「日印原子力協定は、フクシマの教訓を拒絶しようとする既得権益層による試みです。」

◆ 2014年1月14日付 Nuclear hotseat

http://www.nuclearhotseat.com/1666/

  • 核軍縮平和連合 (CNDP) 主催者の Kumar Sundaram 氏のインタビュー (音声の16:20-23:25):
    インドの原発立地で生活・安全・環境が脅かされる農民や漁民などの庶民が、原発に強く反対し、草の根の抗議運動を行っている。日本とは友好関係を築きたいが原子力はお断りだ。
  • (画像)
    「海外で日本の売った原発が事故を起こした場合、その費用はすべて日本国民の税金から支払う約束になっている。」
    (参考記事: 「真実を探すブログ」 http://saigaijyouhou.com/blog-entry-653.html)

(塾長コメント)

これらの記事を見ていて、原子炉メーカーの賠償責任は果たしてどうなっているのか、気になりました。下記の報告書が参考になります。

◆ 2013年2月19日付 グリーンピース・インターナショナル報告書

「福島原発事故 空白の責任 ― 守られた原子力産業」(日本語要約版)
(英語原題: “Fukushima Fallout – Nuclear business makes people pay and suffer)

http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/press/2013/pr20130219/

http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/20130219_Report1.pdf

「原子力発電の開始から60 年、原子力産業は原子力発電所が起こした過失や事故の被害費用を負担することをまぬがれてきた。各国の政府が原子力産業の利益を守る制度を作りあげてきた一方で、実際に費用負担をするのは原発事故で被害を受けている市民である。

「2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所事故でも、原子力産業界は利益を上げ、代償を払っているのは市民だ。(中略) 被災者が公正かつ迅速な賠償を受けていない一方で、原子力産業は事故の責任を回避し続けている。その姿勢はまさに『何事もなかったかのよう』で、原子力のリスクを生み出しながら、事故が起きた場合の対策を全く行わずに事業を続けている。」

「実質国有化された東京電力は別として福島原発事故の巨額の被害に対して原子炉メーカーらが1円も支払わずに済むのはどうしてだろうか。福島第一原子力発電所の建設、修理、メンテナンスで大規模契約を得たGE や日立製作所がこれまで通りに平然と事業を続けられるのはどうしてだろうか。(中略) こうした背景にはあるのは、原子力産業や政府が、原子力産業を保護する原子力損害賠償制度を設け、過失や事故の『ツケ』を市民に押しつけている現状がある。市民を原子力のリスクから守るためには、この賠償制度を抜本的に改革し、原子力産業に自らの事業の結果と失敗について全面的に責任を負わせるようにする必要がある。」

「原子力産業が他の産業と異なるのは、国境を越えて長期的に深刻な汚染を引き起こす原発事故の被害者に対して、完全な賠償が義務付けられていない点にある。」

「原子力損害賠償に関する条約や国内法は、賠償総額を制限し、原子炉の建設と維持により利益を得る原子炉メーカーらを賠償責任から守っている。その結果、被災者は実際に要する費用のほんの一部しか賠償を得られず、これら企業は事故や過失などのリスクを低減する対策を怠ってきた。」

「2012 年6 月に東京電力が実質国有化され、結局、「福島原発事故の請求書」は日本の一般市民が負担することが明らかになっている。」

責任を逃れる原子力産業

「福島第一原発には原子炉が6 基あり、1 号機から5 号機までが米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社製の欠陥機、マークI 型である。1 号機、2 号機、6 号機の原子炉はGE、他は日本の2 社が納入した(東芝が3 号機と5 号機、日立が4 号機)。現時点でGE、日立、東芝を始め福島第一原発に関わった原子炉メーカーはいずれも2011年3 月11 日に発生した事故の責任を免れている。それどころか、その多くは事故が起きたことによって利益を得ているのである。現在、GE、日立、東芝は多くの原子力関連企業とともに、福島第一原発の廃炉や 周辺地域の除染などに携わっている。

「1970 年代、GE の技術者デールG. ブライデンボー氏は、『GE のマークI 型原子炉は冷却剤喪失事故に耐えられるのか』と公に問いかけている。国会事故調の報告書では、マークI型格納容器は1980 年代に補強が行われたが、『ここでの過酷事故に伴う動荷重に対してまでも包含するものではない』(福島原発事故に耐えられるものではなかった)と記され、「格納容器の圧力が設計圧力を大幅に超え、1 号機では2 倍近くまで上昇した」と結論付けている。

「元日立の技術者の田中三彦氏は、福島第一原発4 号機の圧力容器の設計に携わり、後にその危険性を訴えるようになった。建設の最終段階で圧力容器の完全性は大きく損なわれ、法律に従って廃棄せざるを得ない状態になったのだが、それを実行することによる倒産の可能性を心配した日立は欠陥を隠し、その圧力容器は福島第一原発にそのまま設置されたというのである。」

(関連記事) 2013年3月12日付 IPS

グリーンピース・カナダのショーン・パトリック・ステンシル氏:
「もし原子力産業が言うとおり、原子力が安全なのであれば、なぜ原子力産業は賠償総額の制限や免責条項にこだわるのか?」

http://www.ipsnews.net/2013/03/public-pays-for-fukushima-while-nuclear-industry-profits/