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【うらおもて歴史街道 No.2】 ウォール街とボリシェヴィキ革命

○  終わりに

本書に登場した主要な人物・組織の相関図を図4にまとめたので、頭の整理にご活用いただきたい。また、同時代のウォール街近辺の地図を図5に示す。本書に登場した多くの組織が、120 Broadway の近くに密集している様子が分かる。現在ほど通信手段が発達していなかった1917年頃のことである。仲間が「目と鼻の先」にいることは、何かと役に立ったことに違いない。

Fig4

Fig5

何故、ウォール街の資本家達は、資本主義打倒を掲げる共産主義者のボリシェヴィキを支援したのであろう? もちろん、資本家は儲けのためには手段を選ばないから、と一言で片づけてしまうことも出来るが、著者のサットンはさらに考察を深める。

19世紀後半、モルガンやロックフェラーなどの財閥は、アメリカ市場の独占を目指してお互いに激しく争っていた。やがて、彼らは激しい競争よりも、もっと簡単に独占を達成できる方法があることに気が付く。それは、政治を買収して、そもそも競争を排除してしまうことである。警察権を、資本家の独占を保護するために使うのだ。そして、「公益のため」と称して、資本家のために社会全体が自ら進んで働くよう仕向けてしまえばよいのだ。

もしも、少数の共産主義者が市場を統制する全体主義的な国家を建設して、その共産主義者達を上から金で支配できたら?その時こそ、真の独占が達成され、その市場は搾取したい放題の事実上の植民地になるではないか!これこそが20世紀の国際的な独占の形だ、と資本家達は考えたのではないか。広大なロシア市場を、そのような植民地にして独占支配すること。それがウォール街資本家の真の狙いだったのではないか。

資本主義と共産主義は、決してスペクトルの両端で対立する概念ではなく、両者は集産主義 (collectivist)・国家統制主義 (statist) という観点でみれば、極めて相性がいいのである。資本主義がテーゼ (正)、共産主義がアンチテーゼ (反)、そして両者が統合された新しい独占の形がジンテーゼ (合) 。そうやって、マルクス主義の弁証法的に、ウォール街の資本家たちが考えていたとしたら。空恐ろしくなる推理である。その是非の判断は、読者ひとりひとりに委ねられている。(終わり)