投稿記事

【FT解説】 米国のGDP統計

米国の経済分析局 (Bureau of Economic Analysis、BEA) は、このほどGDP (国内総生産) の算出方法を改訂した。主要変更点は、研究開発費や著作権などの知的財産権を、新たに「投資」の項に含め、GDPの算出に加えるというもの。これまでのソフトウェア等に準じた扱いになる。(他には、確定給付年金の会計を現金主義ベースから発生主義ベースに変更するようだ。)  7月31日付でこの変更が適用され、統計が存在する1929年まで遡 (さかのぼ) って適用される。

ご参考) BEAの基準変更に関する説明資料

http://www.bea.gov/national/pdf/flyer_bea_expands_coverage_of_intellectual.pdf

 

7月29日付フィナンシャル・タイムズ (FT) 紙によれば、この変更により、従来の方法に比べGDPの値が3%ほど大きく算定される見込みだ。3%というと、たいしたことのないように見えるが、米国の2012年のGDPは約15.7兆ドル (約1,570兆円) あるので、その3%の4,710億ドル (約47兆円) というのは、ほぼベルギー一国のGDPに相当する金額である。

昔は今ほど知的財産権が発達していなかったので、この算出方法の変更によって、最近のGDPの数字の方が大きく算定される傾向になるであろうことは、想像に難 (かた) くない。

それにしても何故いまこのタイミングでの基準変更なのか。米経済分析局 (BEA) 自身は、新たな国際基準に合わせた変更であり、新基準はより経済の実態を反映したもの、と説明している。しかし、諸々の場面における米国政府の不誠実な態度を見るにつけ、この説明を額面通り受け取る人は少ないのではないか。経済成長がおぼつかないため、小手先の詐術 (さじゅつ) によるごまかしに出たのではないか、という疑念がぬぐえない。

 

実は、米国が主要統計値の算出方法を変更するのは、今回が初めてのことではない。

例えば、1980年代初頭に年率10%を超えるインフレに襲われた米国は、インフレ率の算出方法を変更した。変更前の旧基準によるインフレ率を算出してトラッキングしている Shadow Government Statistics というサイトがある。同サイトによれば、この旧基準による米国の「真の」インフレ率は、現在10% 近いという。米国政府 (Bureau of Labor Statistics、労働統計局) による、2012年のインフレ率の公表値は、2.1% にすぎない。

ご参考URL)

http://www.shadowstats.com/alternate_data/inflation-charts

http://www.cnbc.com/id/42551209 

また、連邦準備制度理事会 (FRB) はマネーサプライの指標の一つであるM3の公表を、2006年3月に突如やめてしまった。その後のFRBが、量的金融緩和 (QE) によってドルの供給を猛烈な勢いで増やしてきたことを思い起こせば、M3の公表停止は、ドルの「真の」供給量を見えにくくするための策だったのではないか、との思いを強くする。

 

このように、米国による統計値の変更は、都合の悪い真実を隠す意図があるのではないか、という疑念を抱かせる。

かつてソビエト連邦が公表していた統計が、デタラメだったことがソ連崩壊によって明らかになったように、米国政府の公表統計値も、アメリカ連邦 (合衆国) の解体とともに、似た運命をたどるのではないだろうか。

(以上)